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BOPビジネスとは?事例で見る新興国・開発途上国で売る戦略

BOPビジネスとは?

BOPビジネスとは、貧困層の多い新興国・開発途上国で、低所得者に有益な商品やサービスを届ける商行為です。
慈善活動ではなく利益を生むビジネスというのがポイント。
「お金がない人向けなのに利益が出るの?」と不思議な気がしますが、未開拓の大きな市場として注目されています。
注目の理由と成功事例を紹介します。

新興国ビジネスに必要な視点

BOPビジネスに参入しようとすると、安い商品を作ればいいというほど簡単ではありません。
貧困層は、資金や、都市までの距離、売買手段などの面で市場アクセスが難しいことが多く、現地に合わせた特別な戦略が必要なのです。
インドやブラジルなど新興国を販売開拓したいときにも、BOPビジネスの考え方は欠かせない視点になります。
日本企業や海外の事例で、今後拡大する新興国市場で売るためのヒントをつかみましょう。

BOPとは?

BOPとは”Base (Bottom) Of the Economic Pyramid”の略。
一人当たりの所得で分類したときに、年間所得が3,000ドル以下の低所得層のことです。
(PPP=購買力平価ベース、つまり物価から計算した為替相場による)
人口数を所得順に並べると、富裕層、中間層、低所得層と下にいくほど人口が多く、ピラミッドのような形になることから来ています。
BOP層の人口やマーケットは以下の通りです。

40億人
・BOPが世界の総調査対象人口55 億75百万人の72%を占めている
・1日当たりの所得がブラジルで3.35ドル、中国で2.11ドル、ガーナで1.89ドル、インドで1.56ドルに満たない人々
・しかしBOP全体としての購買力は大きく、5兆ドルの世界的消費者市場を形成
*国際金融公社(IFC)・世界資源研究所(WRI)のレポート「THE NEXT 4 BILLION」2007年よりそれぞれ引用。下線は筆者による

BOPマーケットの魅力

市場のボリュームゾーンとなる中間層は、ちなみに以下の通りです。

・1人当たりの所得が3,000〜20,000ドルの比較的富裕な中所得層区分に属する14億人は、世界的には12兆5,000 億ドルの市場(引用上に同じ)

中間層が都市に集中しているのに対し、BOP層は主に農村に点在していて、人を介したインフォーマル経済などの非効率な流通が中心になっています。
既に激しい競争にさらされている中間層向けに比べ、未開拓の部分が多く、アクセスするのが難しい反面で可能性の大きいマーケットです。

BOPビジネスが注目される理由

BOPビジネスが一般に知られるようになったきっかけは、2006年のノーベル平和賞です。
バングラデシュで貧困層に融資するマイクロファイナンスを営むグラミン銀行が受賞しました。
土地を持たず従来の融資が受けられない層への融資を可能にしたのは特別な方法です。
銀行員が週1回現地を回って資金を回収。貯金や生活規律を教育。融資を受ける女性が5人1組のグループを作って計画を管理。
こうして、貸し倒れを低く抑えながら、生活を改善するきっかけになる資金を提供しています。

サステナブルなビジネス

BOPビジネスとは、一般のサービスが届かないBOP層の不便さ・不利益を解消し、有益な製品・サービスを提供する商業活動です。
ビジネスを通じて、衛生状態や貧困などの社会的課題の解決、BOP層の生活水準の向上を目標とします。
同時に、企業のビジネスの発展にも寄与します。顧客が豊かになることでビジネスが拡大する、サステナブル(持続可能)なビジネスなのです。

BOPビジネスはネクスト・マーケット攻略

BOPビジネスはSDGsやCSRの社会貢献の観点だけではなく、直接的にビジネス戦略として注目されています。
BOPビジネスの名著、C・K・プラハラード著『ネクスト・マーケット』のタイトル通り、BOP層は次の大きなマーケットです。今後所得が増えて中間層となり、ボリュームゾーンになることが期待されている層なのです。
BOP層が多い新興国は人口が増えるとともに経済成長し、世界経済の中心となっていくと予想されています。
2017年のPWC調査レポートによると、「2050年までにインドは米国を抜き世界第2位、インドネシアは第4位の経済大国」(PPPベース)。
将来の経済大国に今のうちから販売体制を構築しブランドを確立することは、中長期的に重要なビジネス戦略なのです。

BOPビジネスの事例

具体的にBOPビジネスの事例を見てみましょう。

ユニリーバ

有名なのはユニリーバです。
せっけんが普及していないインドの農村部で、1個1ルピー(約2円)の使い切りせっけんを販売。現地の女性を販売人として育成、子どもに手洗いによる病気予防の教育をして、商品・販路・啓蒙活動の施策により、ビジネスを拡大しました。

ヤクルト

日本企業では、ヤクルトが早くから発展途上国を中心に海外での販売を広げてきました。
日本でもおなじみのヤクルトレディによる販売です。
飲み切りサイズの商品、現地の女性による販売、商品の効能を説明する販売方法は、BOPビジネスのお手本のような手法といえます。

日本企業のその他の事例

・味の素
ガーナの乳児の栄養不足による発達遅延対策のために、離乳食用の粉末サプリメントを開発。1袋約10円で発売しました。現地の女性が効能を説明しながら販売します。
・住友化学
防虫剤を練り込んだネットを元に、マラリア予防のための蚊帳を開発。長期間効果があり、経済的にマラリアを予防することができます。

イノベーションで新しい顧客を開拓

BOPビジネスでは従来のマーケティングの範囲を超えた新しい手法が必要です。
そのアイディアは、新興国や、日本などの先進国でも、新しい顧客・サービスを生むヒントになることがあります。
ICTなどの新しい技術を使って問題を解決する以下のような事例も出てきています。
・銀行口座を持たない人へのフィンテックを使った融資
・プリペイドやサブスクを使った高額機器のレンタル

BOPビジネスに必要なこととは?

BOPビジネスとは、貧困層の状況にあった商品・サービスを提供し、抱えている問題を解決していくビジネスです。
富裕層や中間層向けのビジネスとの一番の違いは、既存の流通やメディアによる宣伝に頼れないことにあります。
問題=ニーズや、購買可能な手段・価格など、現地についてよく調査することが欠かせません。
現地の信頼できるパートナーと手を組み、長期的な視点でテストマーケティングを繰り返して進めることが大切です。
現地についてよく知ることは、実はマーケティングの基本。新興国市場を開拓する場合にも、BOPビジネスと同様の視点を持ち、日本や先進国との違いを理解して取り組むことが成功につながります。

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