FOBとCIFとは?貿易用語の意味の基本&貿易実務での使い方
貿易用語FOBとCIFとは?
貿易用語FOBとCIFは、貿易関係で必ず出てくる基本用語です。
貿易実務以外でも、海外との荷物や価格に関係して使われることが多いので、基本の意味を確認しておきましょう。
中級編として、貿易実務でのFOBとCIFの正しい使い方も解説します。
FOBとCIFはどちらを選んだらいいか、メリット・デメリットも紹介。
FOBとCIFをわかりやすく説明
まずは簡単に理解するために、よく使われている意味に絞って説明しましょう。(正確な意味は次章参照)
海外との取引の見積書や、展示会の価格表示にはよく「FOBベース」と書いてあります。
海外から来た荷物の輸入関税・消費税や保険などの計算には「CIF価格で計算」という指定。
これらの注釈は、商品価格が物流費用を含むかどうかを表しています。
なぜこんな注釈がいるかというと、海外の商品を輸出・輸入するときには物流費用が高額だからです。
商品価格が物流費用を含むかどうかで、値段が大きく変わってしまいます。
この価格の前提条件を示すのに使うのが、FOBとCIFです。
FOBとCIFの簡単な意味
FOBとCIFとは、貿易で使う船舶や航空機の運賃や保険料をどちらが負担するかという条件のこと。
・FOB:運賃・保険料を買主(輸入者)が負担。読み方はエフオービー。
・CIF:運賃・保険料を売主(輸出者)が負担。読み方はシフかシーアイエフ。
FOB価格とCIF価格の違い
FOB価格とCIF価格の違いは、運賃・保険料込みがCIFで、運賃・保険料が含まれていないのがFOBです。
FOB価格だと見た目は安いのですが、買主(輸入者)が運賃・保険料を別に払うことに注意。
ベースとなる商品価格が同じなら、FOB価格とCIF価格には運賃・保険料の分の価格差がつきます。
価格見積もりを比較するときは、条件を揃えるか、その分の費用も計算に入れて検討することが重要です。
保険などでFOB条件の建値からCIF価格を計算するときは、FOB価格+運賃+保険料=CIF価格という式を使います。
FOBとCIFの正確な意味は?
FOBとCIFは、インコタームズ(Incoterms)というルールで決められている貿易条件(Trade Terms)です。
インコタームズとは国際商業会議所(ICC)が制定した国際規則。
国際的な取引ではインコタームズの貿易条件を使うのが標準になっています。
貿易条件とは?
貿易条件とは、輸送に関する2つの負担の分担を取り決めたものです。
1) 運賃や保険料、通関費用などをどちらが負担するか(費用負担)
2) 途中で事故や盗難などにあったときのリスクをどちらが負うか(危険負担)
ちなみに所有権の移転はこれとは別に取り決めることになっています。
FOBとCIFの費用負担と危険負担は以下の通りです。
国 | 対象 | FOB (費用負担と危険負担) |
CIF (危険負担) |
CIF (費用負担) |
輸出国 | 国内運送 | 売主(輸出者) | 売主(輸出者) | 売主(輸出者) |
輸出通関 | 売主(輸出者) | 売主(輸出者) | 売主(輸出者) | |
船積み | 売主(輸出者) | 売主(輸出者) | 売主(輸出者) | |
輸送中 | 海上輸送+保険 | 買主(輸入者) | 買主(輸入者) | 売主(輸出者) |
輸入国 | 荷卸し | 買主(輸入者) | 買主(輸入者) | 買主(輸入者) |
輸入通関 | 買主(輸入者) | 買主(輸入者) | 買主(輸入者) | |
国内運送 | 買主(輸入者) | 買主(輸入者) | 買主(輸入者) |
FOBとは?
FOBはFree On Boardの略。日本語では「本船渡し」。
指定した船積港で船の上に貨物を置いたところで、費用もリスクも負担する人が替わります。
「FOB SHANGHAI」であれば船積港(もしくは空港)が上海です。
CIFとは?
CIFはCost, Insurance and Freightの略。日本語では「運賃保険料込み」。
費用負担と危険負担が別の範囲になっています。
危険負担はFOBと同じく、指定した船積港で船の上に貨物を置いたところで移転。
費用負担は指定した仕向港に着いたところで担当が替わります。
「CIF TOKYO」とあれば仕向港(もしくは空港)が東京です。
輸出者・輸入者にとっての具体的な意味は?
もう少し具体的にFOBとCIFの意味に迫ってみましょう。
それぞれの条件のときに、輸出者・輸入者の手配内容・費用と、事故の場合の損失はどうなるでしょうか?
上海港から東京港への輸送を例に説明するので、自分が使う港・空港に置き換えて読んでください。
FOBの場合(輸入)
FOBでは船舶や海上保険を手配するのは買主(輸入者)です。
買主(輸入者)は、上海港から東京港までの船の手配、海上保険、輸入通関、日本国内の配送を手配します。
発生する費用は、船の運賃(フレート)、海上保険以降の保険料と、東京港の港湾費用、輸入関税、日本国内運送費です。
CIFの場合(輸入)
CIFの場合は、船舶や海上保険を手配するのは売主(輸出者)です。これがFOBとCIFの大きな違いになります。
FOBとCIFの共通点は、船が東京湾に着いた後の手配をするのは買主(輸入者)という点です。
買主(輸入者)は、輸入通関、日本国内の配送を手配します。
発生する費用は、東京港の港湾費用、輸入関税、日本国内運送費です。
FOBの場合(輸出)
売主(輸出者)は、出荷元から船積港までの運送と、上海港の輸出通関、船積みまでを担当します。
発生する費用は、上海港までの運送費、輸出時の通関・港湾費用になります。
CIFの場合(輸出)
売主(輸出者)が、船積港までの運送、輸出通関に加えて、東京港までの船と海上保険も手配します。
発生する費用は、上海港(船積港)までの運送費、輸出時の通関・港湾費用、船の運賃(フレート)、海上保険になります。
事故にあったときは?
船や飛行機の輸送中に破損事故などがあったときには、買主(輸入者)が保険会社に連絡して、保険求償をします。
これはFOBもCIFも同じです。
前述したように、危険負担は貨物を船の上に置いたところで輸入者に移るので、上海港で船積みした後の事故は輸入者の損害になります。
CIFでは海上保険を掛けるのは輸出者ですが、保険がカバーしているのは輸入者のリスクなのです。
FOB・CIFの選び方は?
これから取引をするときに、FOBとCIFはどう選んだらいいでしょうか?
どっちが得?
商品そのものの価格や費用が同じなら、どっちが得ということはありません。
貿易条件と価格は一緒に交渉します。
物流費用・保険料を勘案して、貿易条件に見合う価格になればOKです。
物流費用が安い方
FOB vs. CIFの選択のポイントは、相手と自分のどちらの方が物流手配を得意か?という点です。
フレートなど物流費用は、契約するユーザーごとに価格が異なっています。
一般論としては、輸出入の物量が多い方が有利です。
あまり経験がない人は、輸入ならCIF、輸出ならFOBにして、相手に手配してもらう方が安く手軽に運べるでしょう。
自分が手配するときの費用を計算して、相手の見積価格とどちらが安いか見比べてみてください。
輸送や保険を自分で選びたい
いつもの会社に担当してほしい、相手の都合に影響されたくないなど、なるべく自分の方でコントロールしたい場合には、輸送や保険を自分が決められる方を選択します。
輸出ならCIF、輸入ならFOBです。
三国間貿易の場合には中継地が取引を仕切るので、輸出側の取引をFOB、輸入側の取引をCIFにするのが一般的です。
貿易実務でのFOBとCIFの正しい使い方
貿易用語としてよく使われるFOBとCIFですが、え? FOBとCIFを使うのは古い?
今の貿易実務でFOBとCIFを使ってもいいのでしょうか?
取引先との認識のズレを生まないように今のルールを知っておきましょう。
インコタームズ2020版でのFOBとCIF
FOB、CIFという貿易条件を決めているインコタームズは、物流の変化に合わせて、近年では10年に1度改定されています。
今の最新版は「インコタームズ2020」です。
従来の物流は船舶による輸送が中心。FOBやCIFはこの頃に決められた条件で、船が前提になっています。
近年増加しているコンテナ貨物や航空貨物に合わない部分があり、2010年版の改訂の際に、どの輸送にも使えるように条件が整備されました。
インコタームズ2020では、FOBの代わりにFCA、CIFの代わりにCIPを使うことが推奨されています。
FOBやCIFは船舶、しかもコンテナ貨物以外の在来船に適している条件に変更になりました。
FOBとCIFを使うのはOK?
では、現在の貿易では、航空輸送でCIF条件を使うのは間違いなのでしょうか?
インコタームズ2020のルールとは違いますが、実は航空貨物でもコンテナ貨物でも使うことは可能です。
インコタームズは法律ではなく、定型的な貿易条件の型を決めているだけなので、輸出者と輸入者が了解していれば別の条件を使ってもOK。
インコタームズ2000版によると明記しておくとトラブルが避けられます。
インコタームズ2020の貿易条件
インコタームズ2020のほかの条件も見ておきましょう。
買主(輸入者)の負担が大きい順です。
すべての輸送方法に適した条件
・EXW (Ex Works)「工場渡し」:工場で引き渡し。その後はすべて買主の責任
・FCA (Free Carrier)「運送人渡し」≒FOB
・CPT (Carriage Paid To)「輸送費込み」≒CFR。保険料は買主負担
・CIP (Carriage and Insurance Paid To)「輸送費保険料込み」≒CIF
・DAP (Delivered at Place)「仕向地持込渡し」:仕向地(倉庫など)で荷卸しせずに引き渡し
・DPU(Delivered at Place Unloaded)「荷卸込持込渡し」:仕向地で荷卸しした時点で引き渡し
・DDP(Delivered Duty Paid)「関税込持込渡し」:輸出者が関税まですべて負担
通関を売主(輸出者)がする条件はDDPのみです。
EMSや、DHL・FedExなどの国際宅配便を使うときには、関税売主負担=DDP、買主負担=DDUと表現することがあります。
DDUも以前インコタームズにあった条件です。
船舶輸送(在来船)に適した条件
・FAS (Free alongside Ship)「船側渡し」:埠頭やはしけの上など船側で引き渡し
・FOB (Free on Board)「本船渡し」
・CFR (Cost and Freight)「運賃込み」:通称C&F。CFR価格+保険料=CIF価格
・CIF (Cost Insurance and Freight)「運賃保険料込み」
FOBとCIFは貿易の基本用語
FOBとCIFは代表的な貿易条件です。
物流関係の費用とリスクの分担を簡潔に表現できるので、貿易関係では正確な定義を超えて幅広く使われる用語になっています。
貿易条件を見れば、商品価格に運送費・保険料が含まれているか一目瞭然です。
見積もりなど価格を見るときには、貿易条件を確認するようにしてください。
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