日欧EPAの特徴は?代表的な品目と関税率、EPA税率の使い方
日欧EPAとは?
日EU経済連携協定は、日本とEUの間で締結されているEPAです。
略して日EU・EPA。日欧EPAとも呼ばれています。
英語ではJapan-EU Economic Partnership Agreement。
2019年に発効した大型EPAの特徴と関税率、EPA税率の使い方をご紹介します。
日欧EPAの特徴(1)大経済圏
日欧EPAの特徴は世界最大級の大型EPAということです。
日本のGDPは世界第3位の4.8兆米ドル。
EU27カ国の合計は13.6兆米ドルで、世界第2位の中国を超える規模です。(2017年)
合計すると世界の20%を超える経済圏を形成しています。
人口でも5.72億人(2019年)の巨大市場です。
日本とEU加盟国の間では、日欧EPAが唯一のEPAになっています。
EUの加盟国は?
EUの加盟国:ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、エストニア、アイルランド、ギリシャ、スペイン、フランス、クロアチア、イタリア、キプロス、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ハンガリー、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スロバキア、フィンランド、スウェーデン
尚、スイスは不参加、イギリスは2020年に離脱しています。
日欧EPAの特徴(2)高レベルの貿易自由化
日欧EPAが大型EPAであるのは、取り決めた貿易自由化のレベルが高いことも理由です。
以下の通り高率の関税撤廃率で合意しました。(品目ベース)
・EU産品の日本への関税撤廃率:約94%
・日本産品のEUへの関税撤廃率:約99%
地理的表示(GI)
地理的表示(GI)を相互に保護することも取り決められました。
地理的表示(GI)とは、酒類や農産物での名称で、産地と品質等の特性が結び付いているもののこと。
たとえば「シャンパーニュ」や「神戸ビーフ」などが登録されています。
ブランドの保護や価値向上が期待できます。
投資やサービス貿易、電子商取引
他の分野でも自由化に合意しています。
以下はその一部です。
・サービス貿易・投資分野を原則自由化。例外をネガティブリストで明示
・電子商取引の際のソースコード開示要求の禁止
・国有企業や補助金に関するルール
・営業秘密の保護
・転勤などの際の滞在手続きの簡素化
日欧EPA適用の関税率は?
では日欧EPAでどんな品目の関税率が下がっているのでしょうか?
以下の例で、即時撤廃のものは2019年の発効時にすでに0%。
段階的に削減するものは毎年税率が下がっています。
具体的な品目のスケジュールは、日本側ステージング表、EU側譲許表で調べることができます。
EU産品を日本に輸入
EU産品を日本に輸入するときに関税が下がる代表的な品目は以下の通りです。
・ボトルワイン:(EPA前の関税)67円~125円/L→即時撤廃
・スパークリングワイン:182円/L→即時撤廃
・ハードチーズ(チェダー、ゴーダ等):29.8%→段階的に15年かけて撤廃
※ソフトチーズ(カマンベール等)は関税割り当ての枠内のみ段階的に15年で関税撤廃
・革靴:関税割当制17.3~24%、対象外は税率30%か1足4300円→17.3~24%に統一、段階的に10年かけて撤廃
・繊維製品のアパレル:4.4%~13.4%→即時撤廃
・プラスチック製品などの化学工業製品:1.6%~6.5%→即時撤廃
日本産品をEUに輸出
日本の製品をEUに輸出するとき、工業製品は100%関税撤廃で合意しています。
・乗用車:(EPA前の関税)10%→7年かけて撤廃
・自動車部品:貿易額の9割以上が即時撤廃
・一般機械、化学工業製品、電気機器:貿易額の9割以上が即時撤廃
対象品目、原産地規則を調べる
多くの品目の関税が下がり、輸出・輸入のメリットが大きい日欧EPAですが、自動的に適用されるわけではありません。
適用対象かどうか確認、そして申告のステップです。
対象品目を調べる
まず日欧EPA特恵税率の対象品目か調べてみましょう。
物品の種類を表すHSコードを調べて、税率を確認。
EPA税率が書かれていれば対象品目です。
念のためMFN税率と比較しておきましょう。日本とEU間で通常適用されるのがMFN税率です。
日本への輸入の場合は、実行関税率表でチェック。
実行関税率表の見方は以下記事の「【ステップ3】「関税率」を読み解く」で紹介しています。
日本からの輸出で関係するEU側の関税は、EUのTARICデータベースか、FedExが提供しているWorld Tariffで調べられます。
原産地規則を調べる
EPA税率の適用を受けるには、さらに原産地規則を満たす必要があります。
原産地規則とは、輸出・輸入する荷物がEPA締結国の原産品として認められるためのルール。
主要原材料が域内で作られているか、品目別原産地規則(PSR)を満たすことが必要です。
輸入材料を使っている場合には、関税分類(HSコード)変更、域内での一定の付加価値付与や、特定の加工工程といった条件があります。
日本とEUで条件は同じ。税関の原産地規則ポータルで調べられます。
日欧EPAの原産地証明書
日欧EPAの特恵税率に該当すると分かったら、次は申告です。
日欧EPAの原産地証明手続きは、自己申告制度(自己証明制度)を採っています。
他のEPAに多い第三者証明制度(日本商工会議所が原産地証明書を発行する方法)ではないので注意。
申請方法
申請には2つの方法があります。
・輸出者によって作成された原産地に関する申告文
輸出者か生産者が作成し、インボイスなどに記載します。日本語か英語でOK。
申告文と原産品申告明細書の書式はこちら→原産地規則ポータル
輸出者参照番号(REX number)には、EU側輸出者は登録輸出者番号を記載。日本の輸出者は法人番号か、なければ空欄にします。
・「輸入者の知識」に基づく申請
輸入者が得ている知識に基づいて輸入申告時に必要情報を提供します。
フォーマットは自由です。
根拠資料を保管
申請する際に提出する情報は簡単な内容のみですが、根拠資料を作成し、要求があったら提出できるように4年間保管しておくことが重要です。
どの原産地規則で判断したか、それを判断した理由の資料を作成します。
詳細はJETROの「日EU・EPA解説書」を参照してください。
20万円以下の輸入は申告不要
日本に輸入する場合は、課税価格が20万円以下の場合には、原産品申告書の提出は必要です。自動的にEPA特恵関税の適用が受けられます。
EUの輸入手続きでは、貿易の場合は金額にかかわらず申告が必要になっています。
日欧EPAは貿易へのメリット大
日欧EPAは貿易自由化の見本になるような大型EPAです。
関税引き下げの範囲が広く、輸出・輸入ビジネスには大きな影響があります。
商品が対象になるか確認し、ぜひメリットを取り込んでください。
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